郷原信郎氏  (c)朝日新聞社
郷原信郎氏  (c)朝日新聞社
森友学園問題の一連の流れ(週刊朝日 2018年3月23日号より)
森友学園問題の一連の流れ(週刊朝日 2018年3月23日号より)

 元特捜部検事の郷原信郎氏が「森友改ざん問題」で、現在も勾留中の籠池夫妻のコメントが重要だと指摘する。

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 今回の文書書き換え問題が、刑事事件として起訴される可能性は低いだろう。今回の書き換えは、基本的には「一部記述の削除」に過ぎない。書き換えによって、国有地売却に関する決裁文書が事実に反する内容になったと認められなければ「虚偽公文書の作成」とは言えない。

 もちろん、疑惑の核心とされてきた森友学園と安倍昭恵氏との関係、日本会議大阪と籠池氏との関係などが、国有地売却の決裁に影響する重要な要因だったと関係者が認めれば話は別。例えば「書き換えによって、決裁の趣旨とは違う文書になった」など、書き換えた者の自白がないと、文書犯罪として成立させるのは難しいだろう。むしろ、過度に刑事事件としての起訴に期待すると、政府側に調査回避の口実を与え、結果的に真相が解明されることを免れる流れを作ってしまいかねない。

 もちろん捜査の進め方如何では、違った展開もあり得ないではない。しかし、これまでの森友関連事件への検察の動きを見ていると、政権側に不利な捜査を積極的に行うとは思えない。今回の朝日新聞の情報源は検察ではないかと言われているが、仮にそうだとしても、組織的なものではなく、捜査の現場レベルの不満が、リークにつながったということだろう。真相解明のためには、「書き換えられた決裁文書」の提出を受けた“被害者”とも言える「国会」が、主導的な立場で調査を行うしかない。福島原発事故の際に国会に設置された「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」のように、国会で第三者調査委員会を設置すべき問題だろう。そうなれば、さすがに検察もメンツに関わるので、動かざるを得なくなるのではないか。

 もう一つの重要な問題が、今回の「書き換え前の決裁文書」に、籠池氏の発言に関する記述が多数出てきているのに、籠池氏が「口封じ」のように接見禁止で長期勾留されているため、コメントが一言も出てこないことだ。今回の書き換えの問題は、籠池氏自身の起訴内容と直接関係していないので、籠池氏の発言が弁護人を通じて公表されても罪証隠滅にはならないはずだ。籠池氏自身が、財務省側との交渉で、どのような趣旨で発言したのか、籠池氏自身に聞かないと解明できない部分が大きい。政治的、社会的に注目される刑事事件の場合、接見禁止で勾留されている籠池氏側の言い分を社会に発信することも、弁護人の重要な役割では。

(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2018年3月30日号

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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