「まじめで責任感が強い場合、自分のこれまでの価値観がひっくり返るようなことが起こると、自分自身が揺らぐような事態になる。まじめな分、余計に罪悪感にさいなまれ、ものすごく気分も落ち込むし、不安感も強くなりやすい」

 遺書があったと報道されたが、遺書を残すということはどういう意味があるのか。

「復讐の意味合いがあります。いじめられて自殺した子が遺書を残すじゃないですか。それはなぜ残すかというと、自分をいじめた人たちに、罰を与えることを期待して遺書に託すんです」(前出・片田氏)

 ただ、遺書はもう燃やしてしまったのではないかという説も出ている。

「奥さんとは連絡が取れない。一番ショックを受けているのではないか。料理がうまく、やさしい人。Aは仕事ばかりだったので、普通のことはあまりできない。だから、奥さんがいつも支えてくれていた」

 麻生太郎副総理兼財務相は12日の記者会見で「進退については考えていません」と否定した。

 そして昭恵夫人ら複数の政治家の名前を文書から削除した責任を「書き換えのトップはその時の担当者で、そんな偉い所じゃないが、最終的な決裁として(9日に辞任した国税庁長官の)佐川が理財局長だったから、その意味で理財局長となろうと思う」と押し付けた格好だ。親族はこう憤る。

「汚い仕事をなぜ、Aにやらせたのか。それは誰が何の目的で命令していたのか。書き換えの命令系統を明らかにしてほしい。本人の死を無駄にして欲しくない」

 すべてを明るみに出すのが、命を絶ったAさんに対するせめてもの供養ではないか。

(本誌・上田耕司)

※週刊朝日オンライン限定記事

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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