そんなメッセージをわかりやすく伝えているのが、鈴廣かまぼこの「老舗にあって老舗にあらず」。社是は外への発信でなく自らを戒めるものと考え、本来は自ら言う言葉でない「老舗」をあえて使っているという。

 モーター大手の日本電産の永守重信会長兼社長は73年の設立以来、一代で売上高1兆円企業に育てた。

 猛烈な働きぶりで知られた永守社長。記者も取材の際、「社長が朝一番に会社に来てかぎを開け、仕事を始める」との逸話をかつて聞いたことがある。そんな永守社長らしく、同社の三大精神の一つが「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」。最近の若者だと戸惑う人もいそうな熱く激しい言葉だ。

 ただ、パナソニック創業者の松下幸之助も、似た意味合いの言葉を残している。

〈成功とは成功するまで続けること。辛抱して根気よく努力を続けているうちに、周囲の情勢も変わって、成功への道がひらけてくる。(中略)およそ物事というものは、すぐにうまくいくということはめったにあるものではない。根気よく辛抱強く、地道な努力をたゆまず続けていくことによって、はじめてそれなりの成果があがるものだという気がします〉(『人生心得帖』、PHP文庫)

 日本電産と同様に、京都から世界的なメーカーに飛躍した京セラ。鹿児島出身の稲盛和夫・名誉会長が社是としたのが「敬天愛人」。地元の西郷隆盛の言葉だ。

 仕事への取り組み方で、独自の価値観を掲げているのがユニ・チャーム。同社の「3つのDNA」の一つが「原因自分論」。安易に責任転嫁せず、原因を自分に求めることで自らの教訓にするという意味だ。同様に、「変化価値論」は、変化こそ価値を生み、自らの成長を価値あるレベルまで高める意味の戒めという。

 半導体製造装置大手のSCREEN HDの創業の精神の一つが「思考展開」。何が不足しているかを考え、新商品開発などに結びつけるとの思い。同様に、「志高転改」という言葉も掲げている。高い志で改革・改善を求め、企業価値向上に努めるという意味だ。

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