「東日本大震災から4年経っていたのに、いまだ復興していない景色に衝撃を受けました。被災地に住み続けている人たちに対しては、行くところがないんだろうなと思っていた。『今は楽しく生きている。海に家や家族を奪われたけど、それでも海が好き』と話すのを聞いて、自分の思い込みに気づきました。もっと日本の良さを知りたいと思い、日本の大学への進学も考え始めました」

 高3の6月に、東大の高校生講座に参加した。

「関心があったジャーナリズムの講座で、内容がおもしろかったうえ、女性の教授が私の質問に丁寧に答えてくれた。教授がこんなに真剣に向き合ってくれる大学に行きたい。東大の推薦入試は米国の入試プロセスと似ていることもあり、受けようと思いました」

 将来像は固まっていない。

「いろいろなことにチャレンジしてから決めたい。震災ボランティアで『レッテルを外すことの大切さ』を痛感した。そのことを伝えられるジャーナリストや教員など、自ら発信できる人になりたいです」

 北嶺(北海道)の坂本京也(けいや)さんの強みは「ロボット」。京大工学部電気電子工学科で、開発に携わりたいという。

「小6から中2までロボット教室に通い、大好きになりました」

 中3のとき「ロボカップジュニア」の世界大会に出場し、OnStageリーグで優勝した。

「2分間の演技時間で、ロボットがダンスや演技を披露する。世界一になれたため、高校時代は論文を書いていました」

 高2のときにはAI(人工知能)に関する論文を書き、ロボカップの国際会議で発表した。高3では、日本であったロボカップ世界大会にテクニカルボランティアとして参加した。

 特色入試受験を考えたのは高3の初め。最終目標は医療ロボットの開発だ。

「父親が医師なので、小学生のころまでは医師になりたかった。工学から医療の領域にアプローチしたい。診察もできるロボットを開発し、北海道のへき地医療の問題を改善したいですね」

 洛南(京都府)の久代桂大(くしろけいた)さんが合格したのは京大経済学部。特色入試では3時間の論文が課される。

中学受験のときから国語が得意で、文章を読んだり、書いたりするスピードには自信があった。チャンスだと思い、特色入試も受けることにしました」

 高3の春からZ会の文系小論文の添削指導を受けた。国語の教員に過去問や、提出書類の「学びの設計書」を添削してもらった。今年の試験ではA4で24枚の課題文を読み、合計で約2800字書いた。

「助け合い精神がテーマの600字の課題は、市場経済に接点を持たせて論じました」

 鉄道研究部員として、梅小路蒸気機関車館(現・京都鉄道博物館)との博学連携プロジェクトにも参加した。

「ラジオ番組と鉄道が好きなので、経営学やマネジメントを学び、ラジオ局か鉄道会社に就職したいです」

 話を聞いたみなさんからは、熱い思いが伝わった。ほかにも多くの人がアンケートに応じてくれている。後日改めて紹介したい。(庄村敦子)

週刊朝日 2018年2月23日号