しかし芸人くっきーときたら、何もかもがカオス。見るたび脳裏に浮かぶのはイタリア・ボマルツォの怪物公園だ。森の中でポッカリ口を開ける奇怪な石像のように、グロテスクでおかしくも哀しげで、なぜか不安な気持ちになる。人印のネタなんて、これですよ。「(くっきーの声)ねぇママ、人間てどうしてしゃべれるの? それは弱い生き物だからよ。(斎藤)シュコー」
笑いどころが行方不明。
そんな世界に飛び込みたい斎藤。以前からサンシャイン池崎になりきって絶叫してみたり、ドラマで下着泥棒を演じたり、常に「こんな自分をぶっ壊したい」という破壊衝動をひしひしと感じる。なんて見事なこじらせイケメン。「二枚目だから」「男前ですね」「モテモテでしょ」なんて言葉で片付けられ、日々消費されていくことへの怒り。そんな時、かつてはみんな悪役をやりたがったけれど、今の時代目指すはお笑いだ。
そもそも二枚目俳優は、生まれながらにイケメンというお面をかぶっているマスクマンだ。脱ぎたくても脱げないそのお面をもてあました時、もう一枚かぶったマスク。誰にも知られずそっと「シュコー」と言いたいイケメンの業の深さよ。
※週刊朝日 2018年2月16日号