後輩A「来年はプレッシャーかかりますねぇ~」


私「そう?」
A「だって続けて大賞獲らなきゃ、ちょっと尻すぼみじゃないですか。△△兄さんは一度大賞獲ったら、辞退してましたよ」
私「……早く言えよ。辞退できるのかよ!」

 翌年度、奇跡的に2度目の大賞を頂きました。自慢じゃありません。こっちだって必死。担当者が「誠におめでとうございます! ついては来年度も……」。

私「いやいや(汗)、もうもう」担当者「キリよく3連覇! 3連覇は、今まで□□師匠しかいません。ぜひそれに並んで!」
私「……むう……」

 人間、色気を出すとろくなことがない。翌年度は金賞でした。銀→大賞→大賞→金といういびつな受賞歴に。本当は賞にあたわずなところ、「まぁ仕方なく『金』やっとこか」みたいなかんじ。この『金』についてはいらぬ深読みをしてしまいます。

 さっき私のHPを見たらプロフィルには『金賞』が書かれていません。管理人が『尻すぼみ感』を気にしてあえて記載しなかったのでしょうか? 私としては過去の反省材料として、むしろ書いといてほしいぐらいです。なにが反省って「断るべき時にはちゃんと断る勇気を持つ」ってこと。ちなみに会の担当者は、4年目の続投については聞いてきませんでした。なんだかなぁ。

週刊朝日  2018年2月9日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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