「新薬のマヴィレット配合錠は、臨床試験の段階では1型・2型を問わず、肝炎患者ほぼ全員のウイルスが消えました。副作用はほぼなく、C型肝炎は飲み薬で治るようになったといえます」(田中医師)

 東京都在住の佐々木邦夫さん(仮名・65歳)は、吐血して同院を受診。食道の血管がこぶのように腫れる「食道静脈瘤」が破裂したことが原因だった。また、C型肝炎による肝硬変を起こしていることがわかった。肝硬変になると、肝臓に血液を運ぶ血管の流れが悪くなって血が食道の静脈に流れ、食道静脈瘤ができることがある。佐々木さんを診た田中医師は、内視鏡で食道静脈瘤を治療したのち、C型肝炎の治療をすすめた。

 佐々木さんのような肝硬変の人はインターフェロンでの治療は受けられなかったが、飲み薬であれば、腹水や黄疸のない軽度の肝硬変なら治療が可能だ。佐々木さんはハーボニー配合錠を1日1回12週間服用すると、3カ月後の血液検査でウイルスが消えていることが確認できた。

 ただ、中等度から重度の肝硬変の場合、今のところ飲み薬は使用できない。しかし、さらなる新しい薬が現在治験中で、近い将来は使用できる可能性が高い。

 飲み薬の登場後、問題となってきたのは、ウイルスの一部に変異が起こり、薬が効かなくなる薬剤耐性ウイルスだ。現在ガイドラインで推奨されている薬の場合、初めて治療する人には、この問題はまず起きない。しかし過去に「ダクラタスビル」と「アスナプレビル」の併用治療をして効かなかった人は、マヴィレット配合錠で再治療しても治らないことがある。

 また、飲み薬には結核やてんかんの薬など、併用できない薬がある。

「新薬の登場で併用できない薬はだいぶ減りましたが、それでもまだ数種類は存在します。治療を開始する際には薬剤師とともに、現在服用中の薬をよく確認して主治医に伝えることが大切です」(同)

(ライター・中寺暁子)

週刊朝日 2018年1月5-12日合併号より抜粋