「頻尿のタイプで最も多いのは『切迫性尿失禁』。膀胱が刺激に過敏になる過活動膀胱という状態が背景にあるケースがほとんどで、おしっこが少したまっただけで強い尿意をもよおすのが特徴です」(嘉村さん)

 尿もれについては、くしゃみや咳でもれる、トイレに間に合わずにもれる状態などが挙げられる。その量は、1回で2、3cc~50ccが一般的だ。多いのは「腹圧性尿失禁」というタイプ。膀胱の出口がゆるいために、おなかにちょっと力を入れただけでもれてしまう。

 このほかに、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁の両方の症状を持つ混合性尿失禁、尿が少しずつもれる溢流性尿失禁、認知症など病気が原因で起こる機能性尿失禁がある。

 一方、男性の場合は、周囲を取り囲む前立腺が肥大するなどの影響で尿道が圧迫され、尿が出にくくなるケースが多い。

 また、病気ではないが排尿後の“ちょいもれ”も少なくない。ある調査によると、“ちょいもれ”は50代以上の男性の3人に1人が経験しているという。男性の尿道は長く、加齢などで筋肉がゆるむと排尿しても尿が完全に出きらず、尿道のなかに残りやすい。そうすると、陰茎を下に向けたときに残っていた尿が出て、下着をぬらしたり、汚したりしてしまうのだ。

 この“ちょいもれ”は別にして、頻尿や尿もれと関連性が高いとされるのが、加齢、肥満、病気や手術(男性では前立腺肥大症や前立腺がん、女性では婦人科系の病気)、出産(女性)だ。高血圧や糖尿病など、生活習慣病の治療薬でも起こることが指摘されている。

 生活習慣と中高年の尿失禁との関係を調べたのが、日本赤十字九州国際看護大学准教授の西村和美さんだ。40~74歳の女性千人の調査の結果、生活リズムや食事時間が不規則、塩分の過剰摂取、20歳のときより10キログラム以上太った、といったことが尿失禁と関連が深いことがわかった。

「生活習慣が直接関係するというよりも、肥満の原因となることが問題ではないでしょうか」(西村さん)

 尿道を締めたり緩めたりするのは、骨盤底筋群という筋肉組織だ。加齢や出産、手術などでダメージを受けて筋力が低下し、締める力が弱まる。そのため、尿もれが起こるのだ。

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