「I型の場合、激しい躁状態に入ると、周囲の人々が『まるで人が変わったようだ』と驚くほど性格や言動が変わってしまうのが特徴です。高揚感、万能感に満ちあふれ、ろくに寝ないで行動し、無謀な事業に手を出したり、投資やギャンブル、酒場での豪遊、買い物などに大金をつぎ込んだりします。また、高揚感を通り越して焦燥感にかられ、わけもなくイライラして当たり散らしたりすることもあります」

 周囲の人々がこうした異常な言動をいさめると、本人は「これが自分の本来の姿であり、正しいことをしている」と信じているため激高し、反論したり暴力をふるったりする。巻き込まれた家族や同僚はとても耐えきれず、家庭生活や社会生活が破たんしかねない。

 一方、うつ状態に転じると、躁状態のときに周囲の人々にかけた迷惑や不始末への後悔も相まって、自殺を図ることもある。実際、双極性障害の患者の自殺率は一般人口の25倍以上、うつ病の約2倍と高い。

 双極性障害では躁状態よりうつ状態の期間のほうが長く、患者が受診を考えるのも主にうつ状態のときだ。しかし、うつ病を疑って受診した患者の約6人に1人が双極性障害であったという報告もある。特に軽躁状態しかないII型の場合、うつ病と区別がつきにくい。

次のページ