ELOを率い、幅広い世代に愛されるジェフ・リン
ELOを率い、幅広い世代に愛されるジェフ・リン
ELO『ウェンブリー・オア・バスト~ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』
ELO『ウェンブリー・オア・バスト~ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』

 ELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)の今年6月のロンドン公演を収録した『ウェンブリー・オア・バスト~ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』が発売された。通常盤は2枚組CDのみ。限定盤にはブルーレイディスクもしくはDVDの映像がついている。この映像がうれしい。

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 もじゃもじゃ頭、ひげ面、サングラス。誰かに似てる!と思ったら映画監督の大林宣彦にそっくりだ。お世辞にも“モテ男”とは言い難い風貌ながら、6万人の観客を狂喜乱舞させ、スタジアムを興奮のるつぼと化してしまう。

 観客の年齢層は幅広い。ELOが最盛期を迎えたのは1970年代半ばから80年代初頭にかけて。それからすると主な観客は日本で言う還暦から40~50代のはずだが、それよりも若い観客が大半を占める。親子連れの観客も多い。誰もがジェフ・リンの歌にあわせて口ずさみ、通路から飛び出して踊り出すカップルもそこかしこ。

 そんな光景を目の当たりにして、ジェフ・リン、さらにはELOがいかに愛されているかを再認識した。すべてはジェフが手がけてきたヒット曲の数々の親しみやすさに由来する。

 ストリングスとシンセによるシンフォニックなロック・サウンド。ビートルズをほうふつとさせるメロディーやサウンド展開。スイート&ドリーミーな60年代のポップスのエッセンスも交えながら、ロック・バンドならではのブギやブルースも。

 サイケ風味のビート・グループから実験的なポップ色を濃くしていったザ・ムーヴ(66年結成)が、そのメンバーだったロイ・ウッド、ジェフ・リン、ベヴ・ベヴァンの3人によってエレクトリック・ライト・オーケストラへと変身を遂げたのは71年のこと。後、チェロ奏者2人とヴァイオリン奏者の計3人をメンバーに迎え、クラシックの弦楽演奏を採り入れたユニークなスタイルが話題になった。

 ロイは2作目のアルバム『ELO2』の制作中に脱退し、その後はジェフ・リンが中心的存在となる。プログレ的な展開を経て、ビートルズの要素を採り入れたシングル「見果てぬ想い」のヒットを生んだアルバム『エルドラド』でブレーク。以来、立て続けにヒットを放つ。

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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