ジャーナリストの田原総一朗氏は日本企業に不正が続出する理由をこう読み解く。
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このところ、世界市場で活躍している日本企業の信じられない不正事案が、次々に露呈している。なぜ、こうした不正が続発しているのか。
最初に大問題になったのは、東芝の7年間に及ぶ粉飾決算であった。こんなことは、東芝の役員であれば誰もがわかっていたはずなのに、誰もそれを指摘しなかった。
私はこの事件で、かつて作家の山本七平氏に聞いた「日本では空気を破ることがタブーになっている」という言葉を思い出した。もし東芝の役員の誰かが「粉飾決算はよくない」と言うと、空気を破ったことで左遷される危険性が強い。それを恐れ、誰もが黙っていたのであろう。しかも、チェック役の監査法人までが粉飾決算を問題なしとして、なれ合ってきたのだ。東芝の歴代社長たちを起訴すべき検察も、まるで気がつかないように、何もしなかった。日本のかなりの層が相当危ないことになっているな、と私は強く感じた。
そうしたら、9月に日産自動車で、無資格の従業員が検査をしていたことが露呈した。さらに、スバルでもやはり30年以上、無資格者が検査していたことが判明した。
しかも、日産が問題になっていた最中に、神戸製鋼所で製品の強度や寸法をチェックする検査証明書が書き換えられていたことが露呈した。神戸製鋼の製品は自動車や飛行機などにも使われていて、製品の品質が劣化していると事故が起きる危険性もある。さらに11月になって、三菱マテリアルの完全子会社である三菱電線工業や三菱伸銅などが製造する製品の材料の特性などが改ざんされていたことが判明した。
そしてさらに11月28日、榊原定征・経団連会長を出している東レの子会社・東レハイブリッドコードが生産する製品の品質データを不正に書き換えていたことが判明した。こうなると、まだまだ日本企業の不正事案が露呈するのではないだろうか。