日本企業の製品は極めて品質が高いことで世界から評価されていたのである。私自身、そのことを信じ、誇りとしていたのだが、一連の不正発覚により、こうした信用力が崩壊せざるを得なくなる。
それにしても、なぜ日本企業は信用力を崩壊させるような不正を続発させることになってしまったのか。
私は戦後、日本で企業を創立し、あるいは立て直した経営者たちを何人も取材している。松下幸之助、盛田昭夫、本田宗一郎、稲盛和夫……。誰もが焼け跡から出発し、日本企業の製品を世界の人々が信頼してくれるよう全力で頑張った。品質の高い製品をつくることに全エネルギーを集中させた。「お客さまは神様です」という理念が企業マンたちの常識となった。従業員たちも、それが社是であるかのように頑張った。
ところが、1990年代の後半から、経済成長が止まりデフレの時代となった。デフレ時代になると、何よりも重要な課題がコストダウンだ。コストのために従業員を減らす。リストラである。正社員を減らし、非正社員を増やす。だが、従来の高品質製品の看板をはずすわけにはいかない。そのために、無資格者による検査や、検査証明書の改ざんという不正が続出してしまうのではないか。しかも、山本七平氏が指摘したように、日本では空気を破るのがタブーのようになっていて、だから会社ぐるみのなれ合いが続発する。だが、日本企業の信用力の崩壊は、日本崩壊につながるはずである。
※週刊朝日 2017年12月15日号