桐谷:連続ドラマの1話に3秒だけ、という時期を続けるうち、「ゲロッパ!」という井筒和幸監督の映画に出させていただいて。それで監督が気に入ってくれまして、「パッチギ!」にも呼んでもらったんです。

林:「パッチギ!」は私もすごく印象に残ってます。この容姿でとんとん拍子に売れっ子になったんだと思ったら、違うんですね。

桐谷:オーディションもぜんぜん受からなかったんです。落ちてあたりまえ、みたいな負けグセがついてました。自信はあるんですけど、ほんまに受からなかったですね。「ぜんぜん受からんなあ。なんであかんのかなあ」みたいな。

林:映画では同年代の芸人が売れてテレビに出てると、「チッ、なんや!」と消すシーンがありましたけど、ああいう感じですか。

桐谷:それはなかったですけど、高校のときは「俺はなんで雑誌の表紙やってへんねん」と思って、自分が表紙の雑誌を自分でつくりました。

林:えっ? それはどうやって。

桐谷:カラーコピーとかまだコンビニになかったんで、お父さんが印刷業者の友達にカラーコピーを頼んで、いいカメラ持ってるやつに俺の写真撮ってもろて、手ェ器用なやつに「MEN’S NON-NO」の書体をマネて「KEN’S NON-NO」と書いてもらって……。

林:「健太」だから「KEN’S NON-NO」(笑)。

桐谷:いまスタイリストやってる友達もモデルとして出て、占いのページとかもちゃんと入れて、雑誌をつくったんです。「見たいやつは3年7組桐谷のところまで来い」と書いたチラシを廊下中に貼ったら、けっこう後輩が見に来ましたね。

林:へーえ。女の子にモテそう。

桐谷:いや、変なヤツだったんです。

林:でも、女子高校生にいちばんモテそうなタイプだと思いますよ。ちょっとワルっぽさもあって。(同級生のスタイリストに)どうでした?

スタイリスト:下級生の女の子にはモテてました。同級生の女の子には、エネルギーがありすぎて、ちょっと引かれてた部分があります(笑)。

林:ああ、エネルギーがありすぎて。いい言葉ですね。

桐谷:引いた可能性はありますね。モテるとかいうよりも、目立つことのほうが大事だったんです。だからやりたいこと全部やって。(構成/本誌・直木詩帆)

週刊朝日 2017年12月1日号より抜粋