そんなことで幸せになれるはずがない。人生にお金は必要ですから、貯蓄することは大事ですが、収入の限度を超えて貯金することはできません。ためられた分の範囲内で老後は生活するしかないじゃないですか。

 そういう意識を持つためにも、「対処力」を身につけることが必要です。いろいろな事態に柔軟に対処できる力のことです。サラリーマン家庭の人たちに言いたいのですが、私は、NPOでも趣味の集まりでも何でもいいので、40代の半ばごろから会社とは全く違った組織に所属して、違う世界の人と付き合うことが大事だと思っています。夫婦2人ともです。

 いろいろな生き方を見て、いろいろな人と話していると、人生はお金に支配されてはいけないことが実感としてわかってきます。そうなればしめたもので、例えば老後に少しお金が足りないことに気付いた時に、近所でアルバイトしたり、若い人に使われたりすることに抵抗感がなくなります。

 健康であること、家族と仲が良いことも老後には欠かせません。この二つに「対処力」が身についていれば乗り切れるでしょう。

週刊朝日 2017年12月1日号

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