"佐藤治彦(さとう・はるひこ)/1961年、東京都生まれ。慶応義塾大学商学部卒業。外資系銀行、企業コンサルタント、放送作家などを経て現職。近著に『年収300万~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』(扶桑社新書)がある。"

 90歳まで生きることが“普通”な時代になってきた。当然、老後に必要なお金も増えていく。90歳まで生きることを考えれば定年後、最低でも2000万円が必要とも言われているが、なかなか難しい話。経済評論家の佐藤治彦氏は「対処力」で回避できると説明する。

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 老後資金として多額のお金が必要と指摘されていますが、ほとんどの人にとって無理ではないですか。20代から40代にかけての家計は住宅ローンと教育費で精いっぱいのはずです。50代前半で子供が大学を卒業し、教育費から解放されても、60歳の定年までは何年も残っていません。今までは退職金をあてにできましたが、これからはそうはいきません。退職金で住宅ローンを返せば、老後へ回せるお金がなくなってしまう家庭が多いはずです。

 こういう構造がわかっているから、少しでもお金をためようと節約に走る人がいっぱいいます。それも半端じゃない。電気代節約のために冷蔵庫は10秒以上開けないとか、電気はつけない、買い物はスーパーを何軒も回って1円でも安いものを買う、洋服はバーゲンでしか買わない……。まさに宗教、「節約教」に支配されてしまっています。

 それでお金がたまるならまだしも、そんな節約では月に数千円がせいぜいです。それと引き換えに、人生を楽しむことを犠牲にしています。「不安病」にかかっている人もまったく同じです。「現役時代の生活スタイルを守りたい」という一心で、お金のことに頭を奪われてしまっています。

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