とはいえ、「ファーストネームで呼び合いさえすれば日本人はイチコロだ」なんてチョロ過ぎる恋愛テクをいまだ信じきっているところは相変わらず癪に障ります。日本もそんな術中にハマるほどお気楽な欧米至上主義ではないと信じていますが、ヤツの手口を逆手に取って『健気で純粋な女』を演じるぐらいのしたたかさで、『オヤジ転がし外交』を推し進めていかないと、相手はかなりの玉です。振り回されるだけ振り回され、最終的に結婚できないパターンもあり得ます。すでに中国という『身持ちの相当堅い本命』をどう堕とすかで頭がいっぱいのトランプにとって、さしずめ日本は『都合の良い二号さん』的存在になりつつあり、さらには『20年前に別れたものの何だかんだで腐れ縁の前妻』臭がぷんぷんするフィリピンのドゥテルテ大統領の存在もないがしろにできません。是非とも、『最後は遺産をいちばん分捕っていく愛人』になるべく安倍さんには頑張って頂きたいものです。

 兎にも角にもトランプという男の思考・発想は『恋愛テクニシャン』のそれであり、得てして外交なんてものは、まさに色恋のかけひきなのだと痛感した次第です。ツイッター上で傍若無人な破天荒さを振りかざすだけの単細胞男のイメージを植え付けておいて、いざ『ふたりきり』になったら異様なまでの紳士ぶりを発揮する。たとえ錯覚だとしても、「あれ? 彼ったら案外まともなのね」と諸外国(オンナ)たちに思わせる戦術は、一定の功を奏していることに間違いはないでしょう。名付けて『ニューヨーク金髪不動産王の絶倫外交』。今のところアジア男子相手のBL(ボーイズラブ)ですが、イギリスのメイ首相、ドイツのメルケル首相という欧州2大女傑に対してはそれが通用するのか? ホントにお尻のひとつも触りにいくのではと、今からドキドキしています。

 そうなれば『グラサン・ボトックス・ファーストレディ』メラニアも、いよいよ黙っていないでしょう。あらゆる女性国家元首に本能のまま嫉妬を剥き出しにするメラニアが世界情勢をぶち壊す? やはりアメリカはアミューズメントの国ですね。

週刊朝日  2017年11月24日号

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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