

北朝鮮へ武力行使も辞さない姿勢のトランプ米大統領。しかし、中国との関係をみると矛盾点があるとジャーナリストの田原総一朗氏は指摘する。
* * *
トランプ大統領ははじめてのアジア歴訪で、日本、韓国、そして中国との首脳会談を終えた。
日米首脳会談を終えて、安倍晋三首相は、日米が「北朝鮮への圧力を最大限まで高めていくことで完全に一致した」と何度も繰り返した。
だが、トランプ大統領は「北朝鮮に徹底的に圧力をかけ、その先には、武力行使もあり得る」と強調している。とすると、安倍首相が「完全に一致した」と言い切るのは、アメリカの武力行使も認めたことになる。そしてアメリカが北朝鮮に武力行使をすれば、北朝鮮は当然ながら韓国や日本に対して報復攻撃を行うだろう。日本がミサイル攻撃を受ける危険性は少なくない。それに対して、日本の自衛隊はどのように対応するのか。日本の国民が最も恐れているのは、こうした事態である。
だが、安倍首相は、こうした事態への対応については全く話さず、なぜか日米首脳会談後に、こうした質問も全くなく、翌日の新聞各紙もこうした事態への疑念には触れていなかった。はっきりしたのは、日本がアメリカから戦闘機F35を42機、さらに陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」などの高価な兵器を購入すること。トランプ大統領のディールは成功した訳である。韓国も原子力潜水艦の購入の交渉を始めた。トランプ大統領は「北朝鮮への圧力を最大限まで高めていく」と強調し、日韓両国の首脳はいずれも同意した。だが、日本も韓国も「北朝鮮への圧力を高める」とは言っても、具体的に圧力を高める手段はほとんどない。強い姿勢を示すだけである。その点、中国は全く違う。中国は北朝鮮を破綻に追い込む、具体的な手段をいくつも有している。たとえば、北朝鮮の貿易の9割は中国がらみである。中国がこれを締め出せば、北朝鮮の経済は、間違いなく破綻する。さらに中国は北朝鮮に原油をパイプで送り込んでいる。これを全面的に止めれば、北朝鮮の一般国民の生活も成り立たなくなる。電力源がゼロとなってしまうからである。だから中国がその気になれば、北朝鮮は核の廃棄にも応じざるを得ない。ただし中国がこうした圧力を本当にかければ、北朝鮮が暴発する危険性もある。そこで米中首脳会談に世界中が注目したのである。