安倍さんが街頭演説するなら、あたしも行きたいと思っていたけど。日時や場所がわからないなら行きようがない。

 もちろん、あたしが安倍さんの演説でいちばん聞きたい話は、『モリ・カケ』問題から指摘されている権力の私物化に関しての、安倍さんいわく『誤解』に関しての説明だ。

 その話をすっ飛ばして帰ろうとしたら、安倍さんに届くよう、大声で、「モリ・カケ!」と叫ぶわな。ほんとにその話を聞きたいから。

 でも、ネット動画で安倍さんの遊説を観ている限り、難しそうね。スーツ着た強面(こわもて)の人や、機動隊や、自民党のジャンパー着た人がわらわらといて、「キャー! 安倍さん、頑張って!」というかけ声以外は、許されない感じだ。熱烈ファン以外の声にも応えるのが、この国のトップとしての使命だと思うけど。すべて、国民なんだからさ。

 話は変わって、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)がノーベル平和賞を受賞した。被爆者たちが諦めず、核の悲惨さを伝えつづけたからだ。

 素晴らしい。この世に、良い核兵器も、悪い核兵器もあるかいっ!

 なのに、政府のお祝いコメントは遅かった。うれしそうじゃないしな。

 国としての正しさや勇気とは、米国と共に小国に向かって、「やるならやれ、こっちもやってやる!」と拳を振り上げることじゃない。こういうときに発揮されるべきだと思う。

週刊朝日 2017年10月27日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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