上念司氏
上念司氏

 すでに土地神話は崩壊、カーシェアも増え自家用車も必須ではなくなった。マイホームやマイカーは考え直すべきなのか。

 経済評論家の上念司氏は、「家は絶対買うべきではない」と力説する。そのこころは?

 上念氏は賃貸暮らしを十数年続けているが、引っ越し歴は実に8回。

「不便さを感じたり、飽きたりしたら引っ越します。現在は賃貸マンションに住んでいますが、2008年のリーマン・ショックの直後に借りたので、家賃はすごく安いです。更新料もありません」

「いつかはマイホームを」と夢を抱く人は多い。会社役員だった上念氏も、かつてはその一人だった。20年前、29歳にして35年ローンを組んで、都内に戸建ての住宅を約5千万円で購入。床暖房や保湿、乾燥の設備を取り付け、屋根裏には収納スペースを設けた。ところが、3年半後、会社を辞め、引っ越すことになった。

「売るときには3700万円になっていました。たった3年半で1千万円以上も価値が下がりました。悔しかったのは、追加工事の床暖房などの分がまったく評価されず、売却額には部屋の広さと駅からの距離だけが加味されました」

 これで目が覚めた上念氏は悟った。

「家を買うことは負債を買うこと、損をするだけなんですね。キャッシュを生むものが資産で、キャッシュを食うものが負債です」

 家を買った瞬間に、固定資産税に火災保険、修繕費……。「お金を払う権利を買うのが負債なんですよね。その典型的な例が越後湯沢です」

 新潟県湯沢町は1990年前後、バブルのスキーブームに乗って、五十数棟のリゾートマンション(リゾマン)が建てられた。全国の2割近くを占める。それから30年。現在は無人の空き部屋が目立つようになってしまった。

「越後湯沢ではマンションが15万円以下、へたすると5万円くらいで売却されている。買い手がつかないのは、オーナーになっても管理費、修繕積立金、固定資産税がかかるからです」

次のページ