

漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」(テレビ東京系 土曜19:54~)を「中年の身体にやさしい」と評価する。
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スイカ柄のヘルメットをかぶった出川哲朗が、番組ディレクターやゲストと共に電動バイクを走らせ、行く先々でバッテリーの充電をお願いしながら、目的地を目指すこの番組。
よくある旅番組の中でも、とりわけのほほんとしている。いつも通り出川がカミまくっても、そのまま受け流される。ただテロップが忠実に「ひだんにょ方(左の方)に民家ないかな」などと再現するのみ。無駄なつっこみは省略だ。
あらかじめ走行ルートも決まってるから、ルート選択に迷うくだりも省略。毎晩、宿泊先もちゃんと確保するので、徹夜でゴールを目指す的な無茶と感動も省略という、みごとな省エネっぷり。さすがテレ東、中年の身体にやさしいね!
そんなゆるやかな番組中、とんでもないこだわりを見せるのが、場面ごとに挿入されるBGMだ。なんせ他番組のテーマ曲使い放題。「なるほど!ザ・ワールド」のテーマで始まり、「目指すは……」と言った途端「アメリカ横断ウルトラクイズ」の曲が流れ、バイクスタートで「仮面ライダー」の主題歌イントロ3秒。
淡路島で出川がタマネギのカツラをかぶると「徹子の部屋」のテーマが流れ、石垣島の川平湾にたどりつけばテレビ朝日のサッカーテーマ曲だから、もう脳内で川平慈英が「いいんです!」って叫んでる。
こうなると、なんでここでこの曲が?ってのが気になってしょうがない。棚田の風景で「カナダからの手紙」は棚田がカナダ。ハンコ屋で「アンコ椿は恋の花」はハンコがアンコ。ピラフ作ってるときに「愛の讃歌」はエディット・ピラフいやピアフ。なんて初級ダジャレシリーズもあれば、お好み焼き屋で突然流れる郷ひろみの「男の子女の子」は、店の名前が「五」、ゴーです!って、全力でとんちクイズを解いてる気分。
BGMに集中して、ついつい画面を見る目がおろそかになっても問題ない。たいてい出川が地元の小学生に「出川、出川ー!」って囲まれているいつもの風景だ。そんな子供たちとのふれあい場面のBGMはいつも「イッツ・ア・スモールワールド」のテーマ。かつて「抱かれたくない男第1位」だった出川が、今や「小学生が呼び捨てにしたいタレント第1位」にララランランラン♪てなわけで。もう好感度の方はフル充電させてもらってます?
※週刊朝日 2017年10月20日号