近畿大学ビブリオシアター1階、図書を中心に構成された「NOAH33」。学生ボランティアが各棚の本から心に響いたフレーズを書き写している黒板も見る者の興味を誘う(撮影/東川哲也)
近畿大学ビブリオシアター1階、図書を中心に構成された「NOAH33」。学生ボランティアが各棚の本から心に響いたフレーズを書き写している黒板も見る者の興味を誘う(撮影/東川哲也)

 おしゃべり自由、24時間オープン、漫画2万冊超──デザインやインテリアが美しい、まるでカフェか何かのようなスペースが次々とキャンパスに誕生している。今や学生の志望理由になるほど進化した大学の図書館を覗いてみた。

【写真】世界中から見学者も…進化する大学図書館5選はこちら

 図書館は私語厳禁──というのは、昔の話。今や“知”との出会いの場を超え、学生たちのコミュニケーションや憩いの場となっている。キーワードは「ラーニング・コモンズ」。図書館にIT機器や学習空間を備え、グループ学習や議論などに対応できる環境をつくろうという、1990年代にアメリカで生まれた取り組みだ。その流れが日本の大学図書館を変えている。

「おしゃべりできる図書館をという案に反対する意見もありましたが、結果的に利用者は倍になりました」(成蹊大学・寺西氏)

 さらに、近畿大学では漫画の所蔵にも踏み切った。「当初は漫画で学生を呼ぶのはどうかと言われましたが、漫画以外の貸出数も伸びました」(同大学・岡氏)

「今では図書館が学生たちの憩いの場、学内での居場所になっています。『図書館を見て、この大学に決めた』という声もあります」(明治大学・折戸氏)

 進化を遂げる図書館が、大学の顔になりつつあるのだ。(取材・文=伏見美雪[本誌]、佐藤裕美)

【Library.1】近畿大学
■松岡正剛氏が監修した“文脈”のある本棚には漫画も2万2000冊
松岡正剛氏監修の新図書スペースには、ジャンルや種類を問わず、関連して興味を持ちやすい本を近くに配架する“知の文脈”に沿った独自の分類法を導入。「思いがけない本との出会いがあるので足を運ぶ回数が増えました」と2回生の藤倉要平さん。月平均25万人がアクセス、貸出冊数も従来の約2倍に増えたというから、効果は絶大だ。

ビブリオシアター(東大阪キャンパス アカデミックシアター内)/大阪府東大阪市小若江3‐4‐1/2017年開館/一般利用:見学可、利用は登録者のみ可、要問い合わせ

次のページ