私は長野で外来診療もしており、多くの患者と接し、行政と連携してきました。

 そこで感じるのは、予防医学への理解の深さです。保健師や保健補導員が数多くいて、地域ぐるみで予防医学を実践している。地域コミュニティーに、予防医学のインフラがある。教育熱心な地域性もあって、うまく機能しています。

 阿部守一・県知事に「長野の最大の財産は、県民ですね」と言ったことがあります。知事も健康長寿県として地域のブランド力を高めようとして、県民がそれについていっている。すばらしいことだと思います。

 長野は地元にがんセンターがないのに、がんの死亡率が全国で最も低い。がん予防の生活習慣のたまものです。予防医学への考え方は県によって大きく違いますが、長野の長寿は予防医学の勝利と言えます。

 世界の長寿地域にはおもしろい共通項があります。

 その一つはぶどうとワインの産地が多いこと。長野や山梨はその典型でしょう。日照、気温、標高など、ぶどうに適した自然条件は、健康長寿にも適しているようです。また、ぶどうのポリフェノールは老化を防ぐ抗酸化作用があり、赤ワインは健康によいお酒です。

 100歳を超えるような長寿者は、治療の効果というよりも病気にならないことで長生きしている。病気は、日々の生活習慣次第で防げます。

 毎日の食べ物や運動を見直すことは、健康で長生きする人生へと変えることにつながるのです。

週刊朝日 2017年9月22日号