こうしたネットで差別扇動を行う団体に資金を提供する動きも封じられつつある。アップルは今回の事件を機に、人種差別を支持するようなメッセージを含むTシャツなどの商品について、決済サービス「アップルペイ」の利用を取りやめた。キックスターターやインディーゴーゴーといった資金調達サービスも、シャーロッツビルで女性を車でひき殺し、多数の人を負傷させた男のための寄付キャンペーンを削除している。

 デジタル音楽配信大手のスポティファイは、今後性差別や人種差別を扇動する「ヘイトバンド」に対して反対の立場を取ることを表明。これまで配信されてきた白人至上主義者バンドの音源を自らのサービスから削除した。今後も同様の対応を行うそうだ。

 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは今回の事件を受け、自らのページで「差別的発言を積極的に非表示にする」と明らかにした。ツイッターもネオナチ系ウェブサイトに関連するアカウントを軒並み停止した。ツイッターはこれまでもこうした差別扇動アカウントを放置してきたことで非難されてきたが、「一線を越えた出来事」と認識したのだろう。今回の事件は、IT業界が一丸となって「差別主義者に居場所はない」と表明するきっかけとなったようだ。

 この動き自体は喫緊かつ歓迎すべきことだが、他方で表現の自由やIT業者に求められる中立性を考える上で、多くの論点を含む複雑な問題だ。IT業界は今後どう差別扇動コンテンツと向き合っていくのか。ネットが新たな段階に入ったことは間違いなさそうだ。

週刊朝日 2017年9月8日号