津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)
津田大介(つだ・だいすけ)/1973年生まれ。ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ウェブ上の政治メディア「ポリタス」編集長。ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られる。主な著書に『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)

 ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。津田氏は差別に対するIT業界の最新動向を紹介する。

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 白人至上主義者・ネオナチ支持者と反対派の衝突で、1人の死者と19人の負傷者を出した8月12日の米バージニア州シャーロッツビルの事件。この対応を巡ってトランプ大統領が「白人至上主義者、反対派双方に責任がある」と、白人至上主義者たちの暴力を免責するような発言をして、大きな批判にさらされている。

 そもそもシャーロッツビルは、人口5万人ほどの小さな市だ。このような場所に全米から白人至上主義者たちが集まった背景には、ネットを中心に活動する「alt-right」(オルタナ右翼)の存在がある。黒人を迫害したKKK(クー・クラックス・クラン)から脈々と続く従来の白人至上主義者団体に、ネット上で強い情報拡散力を持つオルタナ右翼たちが便乗したことで、大量の動員が実現したのだ。まさにITが差別扇動を助長し、差別や偏見を元に引き起こされる犯罪「ヘイトクライム」を起こした典型的事例と言えよう。

 この事態を受け、IT業界各社のトップたちも目の色が変わった。殺害された女性を中傷する記事をアップしていたネオナチ系サイト「The Daily Stormer」のドメイン運用業者が利用を停止。様々なサービスから利用を拒否された彼らは、普通のブラウザーではアクセスできないアンダーグラウンドな「ダークネット」でサイトを継続している。

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