「継承者がいない、子どもに迷惑をかけたくない、そういう声が多い。樹木葬の相談で、35万円×3人分で、約100万円かかる場合もあり、説明するんです。『そのぐらいあれば、お墓が買えますよ』と。でも、『これでいいんだよ』とおっしゃる。『これがいい』じゃなくて、『これでいい』と」

『寺院消滅─失われる「地方」と「宗教」』や『無葬社会』の著者で正覚寺(京都府)副住職の顔も持つ鵜飼秀徳さんはこう話してくれた。

「年に1~2回の墓参りを通して、ほどよい心の距離で、死者との思い出を昇華させていく。墓は残された人のためにあるもの。心の拠り所なんです。私は、墓はあるべきと思っています。ここ数年のイメージ本位の埋葬のあり方、急激な変化への危惧を覚えます」

 墓は遺骨を収納するだけでなく、死者と向き合える場所でもある。骨壺から遺骨を出してパウダー状にし、袋にも入れず合同墓に入れてしまえば、もう後へは引けない。日本には、「骨身にしみる」「粉骨砕身」など骨にまつわることわざも多く、骨には魂が宿ると考えられ、執着もしてきた。そんな大切な「骨」だからこそ、十分に死後の行き先を考えておこう。さて、墓をどうするか。

週刊朝日  2017年9月1日号