「お墓は世の中の変化を示しているのです」

 墓の問題は、空き家問題と一緒だ。都市化や高齢化が進めば空き家が増える。空き墓も増える。閉じる墓に消える墓。人が減り、寺も減る。

「お墓を建てたが、誰も入らずに撤去するケースもあり、お墓を負担に感じている人もいて、この問題は加速するでしょう」(前出の「終の棲家なき遺骨を救う会」担当者)

 一方で、眺望のいい墓を求めて「ここに入って、死んだ後もいい景色を見ながら、のんびりしよう」という思いで探す夫婦もいるという。

「東京郊外に建てたお墓に親が眠っている。それを支えにしている方もいらっしゃるのです」

 関西在住の男性(57)は4月末に墓じまいをし、新たに別の場所に墓を建てた。車椅子の母親(84)の願いをかなえるためで、「これまで実家の墓とあわせて2カ所を行き来するのが大変だったが、同じ敷地内に2基を建てたことで負担が減った。信心深い彼女の願いに報えた」と言うが、計700万円ほどかかった。

 墓に対する意識は、家と似ている。持つか、持たぬか。一軒家かマンションか。誰かと一緒にいたいのか、一人がいいのか。ただ、家は売れるが、墓は売れない。閉じるだけだ。

「いいお墓探し! お墓の引越しドットコム」を運営する全国石製品協同組合の担当者は言う。

「石屋だからかもしれませんが、できる限り、平面墓地を勧めます。昨年インターネット調査をしましたが、墓を建てた人の7割が平面墓地にして後悔していないと言っています。お墓を持っていることは、使用権があり、財産だと我々は考えているのです」

 流行に惑わされず、自分が満足するものを選びたい。

 市民葬儀相談センター成城店(東京都世田谷区)に足を運んだ。仏壇や仏具などが並び、ショールームも兼ねた店だ。もとは郵便局があった。近くに高級志向の食材店などがあり、富裕層が多く暮らすエリア。この店舗の相談内容の4割が樹木葬で、2割が墓じまいだという。担当者は言う。

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