つまり、筋力アップによる「飛距離」に加え、相手の投手の配球にかかわらず、広角に力強くはじき返す「対応力」も備わってきたということだろう。

 春の東京大会から数えて公式戦では8試合連続で本塁打を放ち、高校通算本塁打数は106本に達した。一方で、日大三や東海大菅生といった甲子園出場を視野に入れるシード校が順当に勝ち上がり、早稲田実にはさらに厳しい戦いが待っている。

「どこが相手であっても自分たちの野球をやるだけ。調子は悪くないと思います。(3試合で10打数6安打、3本塁打と)打っているんで。お風呂にしっかり入って、水風呂にも入って、マッサージやストレッチにも気を使って……コンディションも上げられています」

 本人に本塁打の欲はなくとも、周囲や過熱する報道陣の「高校通算本塁打記録(107本)更新」の期待に応えようとし、この1年の「進化」を実感する中で心と体のコンディションを整え、来たるライバルとの一戦に備える。

 当面の目標である西東京大会制覇まで、あと三つ。(ノンフィクションライター・柳川悠二)

週刊朝日 2017年8月4日号