3戦連発の清宮は野村大樹とハイタッチ
3戦連発の清宮は野村大樹とハイタッチ

 打った瞬間、それとわかる本塁打は1本もない。だが、その事実がこの1年の成長の軌跡でもある。

 南平との西東京大会初戦(7月15日、3回戦)。早稲田実の清宮幸太郎は、初回の第1打席に右翼席のポール際に飛び込む先制の一発を放つ。

「芯だったんですけど、こすってしまった。(コースは?)覚えていないです。うまく腕をたたんでフェアゾーンに入れられました」

 4回戦の芦花戦は最終打席に、外角球をレフト方向に流し打って満塁弾。

「感触が良かったんで、これは入ったな、と。8、9、1、2番がしっかり塁に出て、自分や野村(大樹)に回すことをチームとして徹底している。うまく打線がつながりました」

 さらに舞台を神宮球場に移した7月21日の法政戦では、第2打席にバックスクリーン右にソロ本塁打。やはり「芯でこすった当たり」だった。

 3本はいずれも、はた目には「外野フライ」と思う角度。それでも滞空時間が長く、ボールの行方を追う外野手はズルズルと後退していき、最後はただ見送ることしかできない。

 苦い思い出がある。昨年の西東京大会の準々決勝の八王子戦で、3対6とリードされた九回、本塁打が出れば同点という最終打席の当たりは、わずか数メートルの距離が足らず、右翼手のグラブに収まった。

 だが、あれから1年が過ぎた今、同じような当たりでも、もうひと伸びしてスタンドに飛び込む。

「確実に飛距離は伸びてきている。この1年間やってきたトレーニングの成果が出ていると思います」

 清宮には「プルヒッター(引っ張り専門の打者)」という印象がある一方で、この夏に打った3本はすべて打球方向が違う。

「どこに飛んでも、ホームランになるのは、この1年の成長です」

 和泉実監督は言う。

「清宮の場合、内角、外角、高め、低めと、相手がそれぞれ研究して、いろんな球種で、いろんな攻め方をされます。だから彼自身が球種や打球の方向性を絞ることは難しい。それでも打席を重ねる中で、強引に振らず、自然と角度をつけて、スタンドに入れられていますね」

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