沖ノ島と大島、本土の宗像大社は、天照大神の長女神である田心姫神(たごりひめのかみ)をはじめとした宗像三女神を祭り、沖ノ島では4~9世紀頃にヤマト王権が国家的祭祀を行っていたとされている。現在も神職が10日交代で奉仕し、毎日欠かすことなく祈りが捧げられている。

 港で皆が全裸になり海で禊をし、沖津宮へ向かう。狭い参道を一列になって進む。「足元に注意してくださいね」と神職が言う。古代からの遺物が参道のすぐ近くにあるので、踏まないようにとのことだ。まさに手つかずの状態。沖ノ島は祭祀が始まった当時のままなのだ。「海の正倉院」とも呼ばれ、学術調査で出土した約8万点の遺物すべてが国宝に指定されている。これらは地表にあるものを収集しただけで、土の中には現在も多くの遺物が埋まっている。

「世界遺産の沖ノ島などを未来に伝える責任を感じますね」(同)

 世界遺産に登録決定しても、日々の祈りは変わることはない。ただ、7月9日が節目になったことは間違いないだろう。宗像大社のキャッチフレーズにはこうある。

「時満ちて 道ひらく」

※注 「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の構成資産のうち、沖ノ島はもともと入島が厳しく制限されていたが、世界遺産登録を受け、宗像大社は、これまで年に一度だけ一般の上陸を認めていた現地大祭を中止する方針を固めたと7月15日に発表した

週刊朝日 2017年7月28日号