東・西東京大会の開会式で選手宣誓する清宮幸太郎(c)朝日新聞社
東・西東京大会の開会式で選手宣誓する清宮幸太郎(c)朝日新聞社

 早稲田実業の清宮幸太郎は、入学からこれまで、3度、大粒の涙を落とした。

 最初は一昨年夏の甲子園準決勝で敗れた直後。「3年生と野球ができないと思うと……」と、寂しさが漂う表情だったが、1年夏から甲子園の切符を手にし、19打数9安打8打点、2本塁打と充足感はあった。土も持ち帰らなかった。

「どうせ戻ってくる。いらないっす」

 2度目はその直後、再び甲子園だった。U18ワールドカップに出場した高校日本代表で、1年生ながら4番を務めたが、思うような結果を残せず(27打数6安打)、チーム内でも浮いた存在となっていた。

「迷惑しかかけていないし、悔いしか残っていない」

 3度目は昨年7月。西東京大会の準々決勝で八王子に4対6と惜敗し、「野球の怖さを知りました」と口にした。

 清宮にとって、最後の夏は三つのリベンジを果たす時だ。まずは「春を経験したからこそ、やっぱり特別な舞台」と語る、夏の甲子園への2年ぶりの帰還、そして早実にとって2006年以来となる全国制覇だ。

 西東京大会を順当に勝ち進めば、八王子とは準決勝で当たり、ここを突破しなければならない。昨夏に苦しめられた左の早乙女大輝、右の米原大地の好投手攻略がカギを握る。

 さらに9月にはカナダでU18W杯も開催される。前回、前々回と、決勝に進出しながらも初優勝を逃してきた日本の悲願も、選出が確実視される清宮は背負うこととなるはずだ。

 怪物スラッガーとして衆人環視の的となりながらも、それを楽しむようなそぶりすら見せてきた清宮にとって、雪辱を果たす夏の舞台は整った。

 秋と春の東京大会を制し、第1シードで臨むが、対抗馬となるのはやはり日大三だろう。

 秋の大会で清宮から5三振を奪った左腕・櫻井周斗に、左の大砲・金成麗生を擁す。投手、野手共に、層の厚さでは早実を上回る。

 春の大会の決勝で早実と対戦した日大三の小倉全由監督は、エースの櫻井をマウンドに上げなかった。夏を見据え、手の内を隠したのである。結果、18対17という乱打戦に。異例のナイター決戦で、神宮を埋めたファンはさぞ満足して帰っただろうが、内容は大凡戦である。

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