常に選手を信頼し、相手に真っ向勝負を挑む小倉監督とすれば、らしくない采配だ。いや、それだけ早実との勝負に執着しているということなのだろう。斎藤佑樹らが全国制覇した06年をはじめ、早実が甲子園の主役となる年ほど、日大三は早実の引き立て役となってきた。西東京の覇を競ってきたライバルに、3連敗などできるはずがない。

 第2シードの日大三は早実とは反対の山。両校が戦うのは決勝の舞台となるが、そこまで勝ち上がる道のりは、日大三がより険しい。準々決勝での対戦が濃厚なのが東海大菅生だ。140キロ台がズラリと並び、投手力は西東京でも随一で、強打の日大三といえども打ち崩すのは容易ではない。さらに準決勝では春4強の国士舘が待つ。

 東西の東京大会の開会式が行われた7月8日、早実主将の清宮は選手宣誓を任され、冒頭に「野球を愛しています」の文言を入れた。

「球児の代名詞である全力プレー、フェアプレーを心がけて野球の神様に愛されるように。悔いのない夏にしたい」

 清宮にはどんな夏が待ち受けているのだろうか。(ノンフィクションライター・柳川悠二)

週刊朝日  2017年7月21日号