疲れやだるさなどの不調には、甲状腺機能低下症や肝機能障害などの病気が隠れていることもあるが、多くは体のエネルギーが不足してしまっている状態。漢方の見方では、気が不足する“気虚(ききょ)”の状態だと、新井さんは話す。

「気というのは元気、気力といった言葉からもわかるように、生命エネルギーのようなものを指します。本来はこの気が全身をくまなく巡っているのですが、その量が足りなくなると、疲れやだるさ、倦怠感などの症状が出てきます」

 こんな不調に有効な漢方薬は、補中益気湯だ。

「補中益気湯の“中”はおなかという意味。おなかの機能低下を補い、気を益(ま)す作用がある。食欲不振があり、食後に眠くなる人の疲れやだるさに有効な薬です」(新井さん)

 不足した気を増す補中益気湯は、プレゼンの資料作りで追い込まれているときや、資格試験や昇進試験などの勉強で、「ここ一番がんばりたい!」「最後の追い込みで集中したい!」といったときにも使える。

「漢方薬というと長い間飲まなければ効かないというイメージがありますが、即効性のある処方も少なくないのです」(同)

【2】今年は猛暑の予報。外回りで夏バテが心配
<清暑益気湯(せいしょえっきとう)>
 これからの季節に体調管理で注意したいのは、夏バテだろう。外回りの営業マンや屋外で仕事をする人には過酷な季節になるが、「夏バテにも漢方薬が役に立ちます」と新井さん。

「夏はもともと“気”が十分に足りている人でも、暑さで体力を奪われてしまうので“気虚”に陥りやすい。暑さで寝不足気味の人や、付き合いでお酒を飲む機会が多い人は、特に注意が必要です」

 現代の夏バテは、暑さや冷たい飲食物のとりすぎによる胃腸の機能低下に、屋外と室内との温度差による自律神経の不調などが加わるため、めまいや頭痛、動悸などの症状も出やすい。

 そんな夏バテを予防、あるいは改善するための漢方薬は、清暑益気湯。その名のとおり、暑さで疲れが出てしまったときに気を益してくれる。動悸やめまいなどの自律神経の不調にも効く成分が含まれていることから、現代人の夏バテにぴったりな処方だという。

次のページ