漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、ドラマ「貴族探偵」(フジテレビ系 月曜21:00~)の演出が特徴的と主張する。

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 貴族が探偵。凄まじく既視感のあるワードだ。ついこの前、織田裕二がクセの強いセリフ回しでやらかしたばかりなのに懲りないのね、ドラマ界。

 今回の貴族は、嵐の相葉雅紀。相葉ちゃん、どこをどう見ても庶民顔で、キャラ違いにもほどがある。しかも女に甘い設定なのか、やたら「あなたは悪くない。美しかっただけです」とか「アバンチュールのお誘いですか?」とか、へその周りがかゆくなるようなセリフを連発。口を開けば滑ってる状況で、もはや気の毒になるくらい。

 でもご安心あれ。主役の相葉ちゃん、ほとんど出て来ない。なぜなら貴族自身は捜査をせず、聞き込みや推理は使用人たちがする方式だからだ。

 そんな中、絵的にもセリフ的にもボケの量的にも、圧倒的に目立っているのが、鼻形刑事役の生瀬勝久。彼の愛読書は官能小説「喪服の女・さとみ」とか、いらない情報がふんだんに盛り込まれるドラマ前半部分は、ほとんど居眠りしててかまわない。

 物語が動き出すのは、メイドの田中(中山美穂)が事件のポイントをまとめたボードを出してから。それを見て、すかさず生瀬が「まるでミヤネ屋やね!」とつっこむ。そう、このドラマの演出って、思いっきりワイドショーなのだ。

 
 レポーター(ここではメイド・田中)が解説と共に、ボードの紙をベリッとめくって文字を出す。執事・山本(松重豊)や運転手・佐藤(滝藤賢一)が、犯人&被害者に成りきって、再現映像を演じる。

 その映像に生瀬は「コマ撮りで撮ってる。凝ってるなぁ~こまどり姉妹!」などと、しょうもないチャチャを入れつつ、他の出演者のセリフにいちいちリアクション。大事なことは大声で反復強調……と、まさにお前は宮根誠司か!状態。

 推理をしては、必ずはずす新米探偵役の武井咲は、生瀬とやり取りしながら、番組に花をそえる女子アナ的スタンスだ。

 肝心の貴族探偵どこー?って思えば、事件解決後におもむろに感想をひとこと。お前は画面の小窓に映ってるコメンテーターか。

 ミステリードラマを、ここまでワイドショー的にいたれりつくせり説明しちゃうこの演出。ドラマ制作陣は、視聴者がそこまでしなきゃわからないバカだと思ってるのかいな。

週刊朝日 2017年5月19日号

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カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。

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