目が離せなくなるほどの、たちの愛らしい表情や、自然な姿。動物写真家であり、猫写真でもおなじみの岩合光昭さんが、いったいどのようにして、素敵な写真の数々を撮影しているのか、覗かせてもらいました。

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 寒さが染み入る2月の京都。朝4時に起き、6時にはホテルを出て撮影に向かった。40分後、猫がたくさん暮らしていることで知られる神社に到着。いつも猫たちが寝ているあたりを覗きながら、一匹一匹、名前を呼んで話しかける。岩合さんが猫たちにかける声は、とても穏やかだ。

「猫は、言葉じゃなくて音で理解する。安心させてあげるために、優しく声をかけるんです」

 撮影中何度か、すべての猫が境内から姿を消してしまったが、その間も岩合さんは休まない。

「動物は演出がきかないからね。すべて猫さまの機嫌しだい。待つことは苦になりません」

 そう笑って、約8時間、カメラで猫を追い続けた。

「撮っているとあっという間で、まったく気にならない。わっと思うような場面が撮れることは、年に数回しかないんですよ」

 猫との距離が近い、あたたかな写真の数々は、深い愛情があってこそ生まれるのだと、改めて感じた一日でした。

週刊朝日  2017年5月5-12日号

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岩合光昭

岩合光昭

岩合光昭(いわごう・みつあき)/1950年生まれ。動物写真家。1980年雑誌「アサヒグラフ」での連載「海からの手紙」で第5回木村伊兵衛写真賞を受賞。1982~84年アフリカ・タンザニアのセレンゲティ国立公園に滞在。このとき撮影した写真集『おきて』が全世界でベストセラーに。1986年ライオンの親子の写真が、米「ナショナルジオグラフィック」誌の表紙に。94年、スノーモンキーの写真で、日本人として唯一、2度目の表紙を飾る。2012年NHK BSプレミアムで「岩合光昭の世界ネコ歩き」のオンエア開始。著書に『日本のねこみち』『世界のねこみち』『岩合光昭写真集 猫にまた旅』『ふるさとのねこ』『ネコを撮る』『ネコへの恋文』など多数。初監督作品となる映画「ねことじいちゃん」のBlu-rayとDVDが発売中。

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