医薬品とはいえ、これだけ危険な物質が身の回りにあることに危機意識を持った住民側は、臨時監視委員会で専門家を招いて市長に直接危険性を訴えた。その結果、市はそれまでの姿勢とは一転して3月、受け入れを見送った。「住民の理解が得られない」(市民環境部)と判断したためだ。

 ゾーフィゴの廃棄物は今後、どこへ行くのか?

 滝沢RMCを運営する日本アイソトープ協会に尋ねると「具体的な保管場所はセキュリティー上の理由から言えない」との回答。セキュリティーの意味を問うと、「放射性物質という危険なものだから」とのことだった。

 さらに、ゾーフィゴに関してまだ問題は残っていると永田氏は指摘する。

「心配なのは二次被曝です。体重60キロの患者に6回投与すると、一般公衆の年間被曝限度の2千倍近い1980ミリシーベルトも被曝してしまいます。静脈注射後に患者が帰宅すれば、呼気や便などから同居する家族が被曝する危険性がある。それに放射性物質は排出物とともに終末処理場へ運ばれ、患者が亡くなれば火葬場の煙突から漏れ出します。国の被曝を防ぐ対策は十分とは思えません」

 厚生労働省の地域医療計画課では「放射性医薬品を投与された患者が医療施設から退出するまでの基準は医療法にある」としながら、退出後は日本核医学会の定めたガイドラインを守るよう医師が患者に説明するだけだという。

 そのガイドラインには「投与後2-3日間は小児や妊婦との接触は最小限にすること」と書かれているものの、患者が二次被曝のことをどこまで理解しているのだろうか。

 国会でもゾーフィゴ問題は論議され始めた。

 バイエルホールディングの広報本部はこうした問題について、「弊社としては経緯を見守らせていただいている」と回答した。(ジャーナリスト・桐島 瞬)

週刊朝日 2017年4月28日号