キャリアアップやワーク・ライフ・バランス(WLB)など、動機や理由は人それぞれ。重視する条件を自分で明確にしないといけない。

「条件を絞り込まないと、がんじがらめになる。一定の年収以下の仕事は対象外だと決め、チャンスを失う人がいる。年収は下がっても、将来上がる可能性がある。一定の年収があっても残業が長い会社もある。条件の重要度を決め、絶対必要なものと、できれば欲しいものとを区別すべきだ」

 人材としての「市場価値」を知らない人も多い。自分を雇うとしたら、どこがいくら出してくれるのか。経営者の気持ちで考えてみることも必要だ。

「自分のことを過小評価するケースもあるし、過大評価もある。建築の施工管理者やIT関連の技術者ら技能があれば、年齢が高くても転職しやすい。大企業にいてアピールできるものがない人は、転職先に高給を要求しても無理だ」

 DODAの木下学編集長(40)も、価値基準をはっきりさせることが大切だという。

「昇進が遅れて悔しいなど、きっかけはいろいろあり得るが、転職活動のなかで目標は定まるはずだ。そうしないと、どこがゴールだかわからない旅に出かけていくことになってしまう」

 ネットを通じた情報に惑わされて、判断がしにくくなるケースもある。

「自分の目で見て、直接話を聞いて判断する。第三者がブラック企業だと言っていても、働いている人はそう思っていない企業もある。ネットで情報を探し続けていると、いつまでも決断できず、転職活動が長引いてしまう恐れもある」

 専門家の率直な意見だけに耳が痛い人もいるだろうが、失敗事例を学ぶことは改善につながる。

 中高年の社員は、本人が望まなくても、転職を迫られるケースがある。日本を代表する企業だった東芝は、大幅なリストラに取り組む。シャープなどほかの企業でも人員が相次いで削減されている。

 大企業に長年勤めている人ほど、「まさか自分が」と対応できないことがある。いざというときに慌てないように、転職に向けた準備をしておこう。

■転職で失敗する10パターン
○動機があやふやなままで活動を始める
○技能や実績をうまくアピールできない
○年収などあれもこれもと条件をつける
○業種や業界を絞ってほかを検討しない
○将来性ではなく目先の年収を重視する
○転職回数が多い理由を説明できない
○自ら動かず転職サービスに頼り切る
○仕事内容よりも企業イメージで選ぶ
○移る先が決まらないうちに辞める
○家族の理解がないまま強引に進める
(取材をもとに編集部作成)

週刊朝日  2017年4月21日号