渡瀬恒彦さん 最後のドラマに胸をしめつける奇跡のセリフ… 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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渡瀬恒彦さん 最後のドラマに胸をしめつける奇跡のセリフ…

連載「てれてれテレビ」

(c)カトリーヌあやこ

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 漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏は、渡瀬恒彦さんの最後の出演作品となった「そして誰もいなくなった」(テレビ朝日系 3月25、26日21:00~)に、渡瀬からのラストメッセージを重ねたという。

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 孤島のホテルに招かれた人々が、わらべ唄になぞらえて次々と殺される。アガサ・クリスティの名作を現代の日本に舞台を変え、2夜連続でドラマ化だ。

 大地真央、津川雅彦ほか豪華キャストが2時間ドラマのちょい役のように、バンバン死んでいく。そして、そこかしこに滲む、これでもかのテレ朝色。

 元判事役の渡瀬恒彦といえば、テレ朝の「おみやさん」シリーズだし、執事役の橋爪功は「京都迷宮案内」。ナレーションの石坂浩二は、今春からテレ朝のシニア世代向け帯ドラマ「やすらぎの郷」(舞台は老人ホーム)に主演。

 事件を解明する沢村一樹は「DOCTORS~最強の名医~」の主役で、元水泳選手役・仲間由紀恵は「TRICK」シリーズでおなじみだ。冒頭、彼女が推理作家役の向井理に「(ミステリーの)犯人全然わかんなくてー」と言ってたけど、「TRICK」の仲間だったら「全部すべてまるっとお見通しだ!」のはず。

 そんな「誰もテレ朝だった」なドラマの中で、一番ミステリーだったのが昆布である。教え子を溺死させた過去に苦悩する仲間の頬に触れる、冷たく濡れた子供の手……。ぎゃあああっ! しかし、その正体は窓から吊るされた昆布。

 レンガの重しが結ばれていた拳銃。しかし、結んでいたヒモがみつからない。なぜならそのヒモは昆布。ネズミがすべて食べ尽くしたので昆布は消滅、完全犯罪成立って、そんなに昆布が好きか? ネズミよ。

 アガサ・クリスティを日本風に料理しなおしたら、まさかのめっちゃ昆布出汁。6番目の死体・元判事の渡瀬は、手作りちょんまげにのれんの裃姿で発見される。原作では、判事の法服に見立てた赤いカーテンと毛糸のカツラなんだけど、思いきった和風テイスト。てか、ちょんまげ・裃(かみしも)じゃ元判事じゃなくて、元・北町奉行でしょうが! どうせなら、ちょんまげも昆布で統一してほしかった。

 10人の死体を昆布出汁で煮しめたミステリー。しかし最後の最後、渡瀬のセリフは、見ている者の胸をしめつける。「私は余命幾ばくもない。ありがとう、さようなら」。渡瀬最後の出演作品だったこのドラマ。まるで彼自身からあふれ出たメッセージのようであり。まっすぐな瞳のクローズアップを見たら、昆布はどうでもよくなった。

週刊朝日  2017年4月14日号


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カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。

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