そんな「見えない力」も味方にして、早稲田実は優勝候補の一角に名乗りを上げる。それでは、大会は「清宮一色」になるのか。もちろん、ライバルたちが黙っているはずがない。

 筆頭として、大阪の2校を挙げたい。まずは、神宮大会で早稲田実を破り、秋の頂点に立った履正社だ。

 チームの中心は3番三塁手の安田尚憲。「東の清宮、西の安田」と呼ばれる左のスラッガーは身長188センチ、体重95キロの体格で高校通算45本塁打を積み上げる。神宮大会決勝では「清宮を意識しないようにとは思ったけど、刺激になった」と右翼席へ豪快な一発をたたき込んだ。

 安田の後に控える主将で4番の若林将平も昨夏の全国選手権を経験した右の長距離打者で、下位打線も切れ目がない。安田と若林の打撃ばかりが目立つが、エースの右腕竹田祐は最速145キロでスライダーも切れる。投打のバランスが非常に良いチームだ。

 春は12年以来の頂点を狙うのが大阪桐蔭。秋は府予選3位、近畿大会は準決勝で敗れたが、その戦力は全国随一と言っていい。

 特に新2年生に逸材がそろう。投手と内外野どこでも守れる根尾昂は、岐阜・飛騨高山ボーイズ時代から注目された存在。マウンドに上がれば最速146キロ、内野を守れば抜群のボディーバランス、外野からは強肩と高い能力を見せつける。外野を守る藤原恭大、三塁手の中川卓也らもセンス抜群。下級生中心のチームだけに、冬場の伸びしろも大きいだろう。

 連覇を狙う2校からも目が離せない。史上3校目の「春連覇」がかかる智弁学園(奈良)は、昨年から中軸を担う太田英毅、福元悠真が健在。打順が昨夏までの4番から1番に変わった主将の福元は「早稲田実と1回戦でやりたい。注目を浴びる中でやりたい」と気合十分だ。

 史上5校目の「夏春連覇」を目指す作新学院(栃木)は、夏からレギュラーが総入れ替え。だが、夏の決勝で背番号「16」をつけて途中出場した鈴木萌斗と「15」だった主将の添田真聖が1、2番として打線を引っ張り、関東王者として春に挑む。小針崇宏監督の采配も大きな力となる。

 昨年、春夏ともに4強入りした秀岳館(本)もエース田浦文丸、強打の広部就平、木本凌雅ら経験豊富な実力派がずらり。夏4強の明徳義塾(高知)にはプロ注目の強打者西浦颯大がおり、名将・馬淵史郎監督も「選抜が楽しみ。絶対に優勝戦線にいく」と手応えを口にする。

週刊朝日  2017年3月24日号より抜粋