妻:少しでも二人のために何か手助けしたいと思って。ネットに動画をあげるのも自分で勉強し、照明も「教えてください」と周囲に聞いて。もう、やったことがないことばかり。でも、私がやらないと自分で何もしない人ですから。

夫:感謝はしているんですよ。でも、まあ、無言のプレッシャー。ここまでやっているんだからという。要約すれば「脅し」ですね(笑)。

妻:そう言うけど、すぐに「缶バッジがあったらいいなぁ」とかつぶやく。グッズを発注するのは私ですから。しかもできたものを見て文句まで言う。

夫:そこはやはり、職人ならではのこだわりというんですか。

妻:物販の呼び込みも、ぜーんぶ、私ですからね。

夫:嫁は小さい頃から頑張り屋さんで「できない」と思われるのが嫌なんですよ。百点満点の完璧主義。

妻:彼に点数? 30点ね。

夫 ひくー(笑)。

――夫は「孤独好き」で、大川興業時代の舞台で「パソコンにかじりつく眼鏡のオタク青年」という当たり役があったほど。対照的に、妻はママ友リーダー格だ。

夫:以前、主宰ライブを行っていたときには、芸人さんたちに連絡をとるのも嫁がしていたんです。

妻:そういう大事なことをしないんだから。人と付き合わないし。

夫:僕は飲みに行くというのはほんとしないです。友達ですか……いないかも。仲のよかった友人とも、もう3年も会ってない。僕、ぜんぜん芸人っぽくない。根っこには引きこもりっぽいところがあるんですね。

妻:とにかく「おうち大好き」なんです。私は人と会うのが大好きなんですけど、彼は正反対。

夫:嫁は近所のママ友を含め、もう友達がめちゃくちゃ多いですから。しかも自然とボス的なポジション(笑)。昨年、「深イイ話」(日本テレビ系)に出るというので、嫁が招集したら翌日に20人くらい集まった。僕も後輩に声をかけたけど、全員、来なかった。

夫:この間、エッセーの依頼がありましたとマネジャーから言われ、「やるよ」と言ったら、「深イイ」でわが家のことが取り上げられたのを見て、「ぜひ奥さんに」と言うんです。

妻:ケータイサイトなんですけどね。「松本家のパパはお笑い芸人」というタイトルのエッセーです。文章を書くお仕事は初めてで。

夫:それで僕が文章指導。いま、唯一嫁から頼りにされているところです。

妻:いま彼に望むことですか? やろうと思ったことは行動に移してほしい、ですね。

夫:結果を考えたら、これからはうかつに「やろう」と思えないですね(笑)。

週刊朝日 2017年3月17日号より抜粋