ジャーナリスト 兼高かおる(かねたか・かおる)/1928年、神戸市生まれ。59年から90年まで、テレビ番組「兼高かおる世界の旅」(TBS系)をナレーター、ディレクター兼プロデューサーとして製作。86年から2005年まで、「横浜人形の家」館長。外務大臣表彰、菊池寛賞、文化庁芸術選奨文部大臣賞、国土交通大臣特別表彰など受賞多数。91年紫綬褒章受章。現在、日本旅行作家協会名誉会長、淡路ワールドパークONOKORO「兼高かおる旅の資料館」名誉館長、東京都港区国際交流協会会長。近著に『わたくしたちの旅のかたち』(共著、秀和システム)がある(撮影/工藤隆太郎)
ジャーナリスト 兼高かおる(かねたか・かおる)/1928年、神戸市生まれ。59年から90年まで、テレビ番組「兼高かおる世界の旅」(TBS系)をナレーター、ディレクター兼プロデューサーとして製作。86年から2005年まで、「横浜人形の家」館長。外務大臣表彰、菊池寛賞、文化庁芸術選奨文部大臣賞、国土交通大臣特別表彰など受賞多数。91年紫綬褒章受章。現在、日本旅行作家協会名誉会長、淡路ワールドパークONOKORO「兼高かおる旅の資料館」名誉館長、東京都港区国際交流協会会長。近著に『わたくしたちの旅のかたち』(共著、秀和システム)がある(撮影/工藤隆太郎)

 まだ海外旅行が一般的でない時代から、世界の魅力をお茶の間に届け続けたジャーナリスト・兼高かおるさん。ナレーター、ディレクター兼プロデューサーとしてテレビ番組「兼高かおる世界の旅」(TBS系)などに携わり、地球をおよそ180周、訪問国数は約150。作家の林真理子さんが海外での上手なコミュ二ケーション術を伺いました。

*  *  *

林:兼高さん以外のスタッフの方は、英語がしゃべれなかったんですよね。

兼高:しゃべれなくたって大丈夫、マナーがあれば。わたくしたちは取材で現地に行ったら、「ここのタブーはなんですか?」と聞きますが、それでもその国の文化や風習にすべてを合わせるのは無理。ただ、日本人として日本のマナーを体現すれば、どこへ行っても恥じることはありません。それだけでとても好感を持ってもらえるのです。

林:わたしも子どものころ番組を見ていましたが、子どもごころに兼高さんの美しい日本語が印象的でした。たとえばアフリカの踊りを紹介されるときには、「これはお祭りのときの儀式の踊りですのよ」という感じに、丁寧におっしゃる。その言葉に尊敬の念がこもっていて、「ああ、これは大切な文化として見なくてはならないのだな」という思いが湧いてきました。

兼高:相手をバカにしたら仕事になりませんから。それからよく観察すること。たとえば今、林さんとお話ししていても、「いいブローチつけてる。趣味がいいな」という具合に、観察してしまうんです。これはクセですね。

次のページ