ダンスは、“肉体を使った言語”だとアダム・クーパーはいう。6歳の時、初めて人前で芝居をして、自分の言葉や動きによって、それを観ている人の感情が移り変わっていくのを肌で感じた。
「自分の肉体を通して、感情や物語を伝えることは、なんて楽しいんだろう、と。今も、その時の高揚感は鮮明に覚えています。フレッド・アステアやジーン・ケリーが出演するミュージカル映画が好きだったこともあり、いつかミュージカルに出る人になろうと決めました」
とはいえ、普段はどちらかというとシャイな子供だった。11歳で歌やダンス、芝居を専門的に学ぶ演劇学校に入ってからも、成績がビリになった次の学期に突然首席になったことも。「とくに優等生というわけではなかったですね。変わった子供だったと思います」と振り返る。
「私の場合は、表現に関するレッスンも楽しんで取り組んでいましたが、それ以上にステージに立つことが好きでした。昔から、本番に強いタイプなんです(笑)。自分が表現したいことを、観客の皆さんに受け止めてもらえた実感を得られたときに、アドレナリンが出る。逆に、レッスンは好きだけれど、人前に立つと極度に緊張して実力が出し切れない人もいます。自分にどんな適性があるかは、いろんなことを試してみないとわからない。私は、16歳でイギリスのロイヤルバレエ学校に入りますが、その時も、『君はコンテンポラリーダンスをやるべきだ』とか、『ミュージカルの道に進むべきだ』とか、周りの意見は分かれました。でも、クラシックでの経験があったからこそ、今こうやって子供の頃に憧れたミュージカルの世界に辿り着けたのだと思っています」