「危機対応で貸そうと検討しても、だいたい2~3割は条件に合わない。でも、売上高や利益を何百万か減らすだけで基準を満たすことも多いので、一部の職員が業績予想を悪く見せかけて基準に合わせようとするんです」

 15年度の危機対応融資のうち、台風や豪雨などの自然災害を理由としたのは1%に満たず、99%は「デフレ」「原材料高」など。商工中金は融資基準を明かさないが、「審査は業績の数字に厳しく、悪化の原因や背景には甘い」(前出・関係者)のだという。

 今回の不正は「実態としては補助金をだまし取る行為に近く、罪に問われる可能性がある」(刑法が専門の大阪大・佐久間修教授)との見方もあるが、商工中金は昨年11月、鹿児島支店で不正が見つかったとだけ発表。判明した不正の件数も、発生時期も、かかわった職員数も非公表とし、不正が多数あるのをつかみながら「全容解明まで何も言わない」(商工中金幹部)と口を閉ざしていた。

 だが、複数の支店で不正が横行していると年末に朝日新聞から指摘され、1月6日になって急に方針転換。鹿児島を含む国内4支店で少なくとも15人の職員が不正に手を染めていたことを公表した。その数が計221件。第三者委員会を設置し、今後も調査を続けるとしている。

 商工中金の貸出金残高は昨年9月末時点で約9.5兆円。このうち政府がリスクを肩代わりする危機対応は3割超の3.1兆円に及ぶ。調査済みはその一部に過ぎない。不正融資の「闇」はかなり深そうだ。

週刊朝日  2017年1月27日号