デンソーや豊田合成といったトヨタ系、日産との関係が深いカルソニックカンセイやジヤトコ、ホンダ系のケーヒンなど、さまざま。化学大手の三井化学はバンパーなどをつくる原料の工場があり、生産ラインを増やす予定だった。

 部品会社が直接の“口撃”を受ける可能性は低いが、自動車大手の動きがすぐに波及する。大手証券のアナリストは「メキシコは自動車関連の進出ラッシュが続いていたが、発言を受けて計画を見直すところも出てくる」と分析する。

 進出していない企業も安心できない。東京商工リサーチの原田三寛情報本部部長によると、自動車大手の生産計画に支障が出ると、部品の供給網全体が滞る恐れがある。「国内の中小企業にも影響が広がりかねない」と警告する。

 電機業界も要注意だ。メキシコでエアコンをつくる三菱電機は、生産台数を増やす計画がある。パナソニックは換気扇の工場があり、ソニーはCD-Rなどを生産する。トランプ氏は米空調機器大手キヤリアのメキシコへの工場移転を「阻止」した実績を持つ。

 さらに深刻なのは、トランプ氏が中国の工場も問題視していることだ。中国の拠点から米国へ輸出する電機メーカーは多い。「アメリカで売るならアメリカでつくれ」と迫られれば、生産が立ちゆかなくなる。

 意外なところでは、製薬会社も影響を受けている。トランプ氏は11日の会見で「製薬業界はひどい状況にある」として、薬の値段を抑制する考えを示した。

 薬価への不満を取り込む戦略だが、突然の発言に企業側は戸惑った。米国で販売する会社は利益が減る恐れがある。12日の東京株式市場ではアステラス製薬や塩野義製薬など、関連銘柄が軒並み値を下げた。

 どこに飛んでくるかわからない「トランプ砲」に、経済界から反論もある。

 日本商工会議所の三村明夫会頭は12日の会見で、「ツイッターで企業の個別戦略に影響を及ぼすというのはよくない」と明言した。大手メーカートップが発言しにくいのを受けて、あえて指摘したかっこうだ。

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