米デトロイトの自動車ショーで登壇したトヨタ自動車の豊田章男社長 (c)朝日新聞社
米デトロイトの自動車ショーで登壇したトヨタ自動車の豊田章男社長 (c)朝日新聞社

 待ちに待ったというよりはついにこの日が来てしまったか、という感じだろう。1月20日(日本時間21日未明)に米ワシントンで、次期大統領になるトランプ氏の就任式が開かれる。過激な発言を繰り返し、トップリーダーにふさわしくないとの批判もあるなかでの登場だ。就任前からトヨタ自動車を“口撃”するなどし、日本企業は戦々恐々としている。

 トランプ氏のつぶやきは、「トランプ砲」「ツイッター砲」と例えられ、破壊力は抜群だ。日本企業として最初に狙い撃ちされたのはトヨタだったが、次なる標的はどこか。

 トランプ氏がこだわるのが、メキシコに進出する大手自動車メーカー。米、カナダ、メキシコの3カ国間では北米自由貿易協定(NAFTA)がある。メキシコから米国に輸出される自動車は関税がかからない。このため賃金などのコストが安いメキシコに、米自動車最大手のゼネラル・モーターズ(GM)などが相次いで工場をつくっていた。

 これが米国の雇用を奪っているとして、批判を続けてきた。11日の会見でも、メキシコに移転した自動車工場などを念頭に、「米国の工場を閉鎖して多くの労働者を『殺害』した企業には国境税をかける」とした。

 メキシコではトヨタのほか、日産自動車やホンダ、マツダの国内大手もそろって出ている。規模が大きいのは日産で、トヨタの約8倍の80万台超を15年に生産したとみられる。

 大手証券のアナリストは「規模を考えれば、トヨタよりも日産やホンダが標的になってもおかしくない。日本企業の代表としてトヨタの名前をあえて挙げたのではないか」とみる。

 トヨタが“口撃”されるのを目の当たりにして、国内大手の各社とも火の粉が飛んでくることを恐れている。「今はなるべく目立ちたくない」(大手幹部)として、取材への対応も消極的だ。

 部品会社など多くの日系企業も活動する。調査会社の東京商工リサーチによると、16年11月時点でメキシコに日系企業の拠点は529ある。1割超が自動車の部品関連だ。

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