津田大介「『隠れトランプ票』読めぬメディアの限界」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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津田大介「『隠れトランプ票』読めぬメディアの限界」

連載「ウェブの見方 紙の味方」

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大型ビジョンで放映された、トランプ候補の勝利を伝えるニュース (c)朝日新聞社

大型ビジョンで放映された、トランプ候補の勝利を伝えるニュース (c)朝日新聞社

 ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏が、大番狂わせとなった米大統領選から浮かび上がるメディアの課題を指摘する。

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 米大統領選挙は共和党のドナルド・トランプ候補が当選を決めた。ネットでは前々回(2008年)の大統領選で1州を除いてすべて勝者を的中させ、前回(12年)の大統領選で全選挙区の勝者を的中させたことで話題を集めた統計学者のネイト・シルバー氏が、今回は予想を大外ししたことに注目が集まった。

 シルバー氏が運営する選挙予測サイト「ファイブ・サーティー・エイト」で開票前最後に公開した予測では、クリントン候補の勝率が71.4%、トランプ候補の勝率が28.6%だった。トランプ候補にも一定の可能性を示す数字ではあったが、なぜ天才統計学者は最終的な勝者を的確に予測できなかったのか。そこには世論調査では浮き上がってこない「隠れトランプ票」の存在がある。

 トランプ候補はデマも厭(いと)わず敵を設定して攻撃し、人種や宗教に対する差別発言を繰り返すことで支持を伸ばしてきた。ほぼすべての米国メディアがトランプ候補を批判し、クリントン候補を支持してきたのは、そうしたトランプ候補の暴言を問題視したからだった。しかし、「トランプ憎し」という極端なメディアのスタンスは世論調査の数字を狂わせた可能性がある。

 選挙で用いられる世論調査には、大まかに分けて、電話を使った伝統的な世論調査と、ネットを使った調査の2種類がある。前者は名前や年齢、職業などを調査会社に明かした上で回答する必要がある。だが、後者には匿名で回答できるものがあり、そうした調査では電話調査よりも高めにトランプ候補を支持する数字が出ていたのだ。つまり、実際にはトランプ候補を支持していても、それを公言するとメディアが作る空気によって良識派や仲間内からたたかれる。トランプ候補を支持する有権者はそれを恐れ、表面的にはクリントン候補支持と回答することで「隠れトランプ票」が生まれ、選挙予測を狂わせたのだ。今回の選挙では事前の世論調査だけでなく、当日投票の出口調査でも同じ傾向が見られている。こうした隠れトランプ票が結果に影響をもたらした可能性は非常に高い。


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