吉田さんも設定そのものの難しさを指摘する。

「タワマンカーストは5年前にフジが『名前をなくした女神』でセンセーショナルに描いて以来、手垢がついている。新しさを生むのに苦労しています」

 吉田さんのイチ押しは、NHK土曜ドラマ「スニッファー嗅覚捜査官」だ。

「化学物質の臭いまで嗅ぎ分けるコンサル役・阿部寛と母と2人暮らしの刑事役・香川照之。最初は豪華すぎると思ったが、画面も設定も計算されて非常に見やすいし、2人とも問題を抱えていて人間くさい。格好よくないのが魅力です」

 深夜枠で話題を集めるのが「黒い十人の女」(日本テレビ系)。55年前の同名の映画(市川崑監督)をバカリズム脚本でリメイクした。船越英一郎扮するテレビ局のプロデューサーが9人の女と不倫。女同士のバトルが半端ないのだ。

「日本ではブラックコメディーは難しいが、バカリズムの脚本がうまく、見た人は得をするめっけもんのドラマ。トリンドル玲奈が『ババア』を連呼し、水野美紀が針の振り切れた大仰な演技をし、成海璃子が佐野ひなこをぶっとばす。女って怖いと思ってもよし、船越やるなと思ってもよし、チャチャを入れながら笑って見ればいい」(碓井教授)

 船越の実際の妻(松居一代)を思い浮かべれば震え上がるかも? 秋の夜長はぜひあったかくして、ドラマを堪能してほしい。

週刊朝日 2016年11月18日号より抜粋