妻:アイデアのもとは「自分が欲しいもの、使いたいもの」です。機能性が高いものはたくさん世の中にあるけど、「もっとかわいくしたら、もっといいんじゃないかな」と思うから。

夫:いま思うと、彼女は専業主婦には向いてなかったと思う。このバイタリティーはすごい。このときから立場が完全に逆転しました。

夫:入院中、彼女に「せっけんのパッケージの絵を描いて」って頼まれたんです。

妻:彼は絵が得意なんです。

夫:入院で仕事がゼロになって、最初に仕事をくれたのが奥さんだった。そのときに「プライドもくそもないな」と思ったんです。彼女は家族を支えるために動いてくれてる。ありがたいって思いました。

――その後、無事に退院した夫はプロレスを引退し、仕事の幅を広げていく。

夫:僕はそれまでけっこう慎重な性格だったんです。ハードゲイのキャラクターも、「フォー!」と言っているだけのようで、実は思いついてからめちゃくちゃ準備をしている。何でも形にして出すまでに、すごく時間がかかるんです。

妻:奥手なんだよね。

夫:でも入院中に彼女があちこちの会社や工場に連絡して、失敗しながらも走り回って、形にしていくのを見ていたら、「ああ、とりあえず、なんでもやってみないといけないな」って。

妻:以前は彼にアドバイスしたりできなかったけど、いまは「もっと積極的になったほうがいいんじゃない?」とか言います。それも受け入れてくれるし。

夫:誰でも最初は「一つの芸だけを突き詰めて、それだけでやっていく!」と思うんですよ。でもやっぱり飛び抜けた才能がないと、そこまでできない。僕はケガをして、自分がそこまでいくのは無理だと思った。だったらこれからは持てるものをすべて出して、がむしゃらに仕事していかなければダメだと。

妻:いまは絵を描く仕事もしてるよね。

夫:うん。それに彼女に背中を押してもらって、モデル業をやらせてもらったり。とりあえずいろいろやってみよう!と。

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