「実は夏から小田急のうわさを耳にします。百貨店が訪日客需要と東京五輪などがある2020年まではこのまま営業するが、その後は今のような百貨店ではなくテナントビルに建て替える、と。お客さんが『百貨店がなくなったらそちらの店はどうするのか』と尋ねてくる電話も、一部の店に来ているようです」

 渋谷など都内各地で大規模な再開発が進む一方、新宿はバスターミナル「バスタ新宿」ができた南口が先行するのみ。20年を目標に駅の東西を結ぶ通路の拡幅計画こそあるが、受け皿となる東西の駅前は昭和の空気感が残り、車優先の造りのままで都市間競争でも大きく後れを取る。事業環境の激変と待ったなしの再開発。店の形態が変わってもおかしくない。小田急が動けば隣の京王百貨店も続くとの見方もある。取材では百貨店の親会社である小田急電鉄と京王電鉄、東京メトロ、明治安田生命、新宿区などは14年から、水面下で話し合いを進めていることもわかったが、テナントビル化について小田急、京王の両百貨店に尋ねたところ、

「全く決まったことはない」

 と否定している。

 百貨店の未来に何が待ち受けるのか。圓丸氏は言う。

「従来のイメージのような百貨店は3世代での来店がある阪神間や大阪、名古屋、東京などに残る一方で、地方では閉店か、地域ニーズに合わせた内容に変わっていくと思います。従来型の百貨店の仕事はどんどん減る。欧米では百貨店は大型小売店の中の一つにすぎません。国内では百貨店関係者は業界内しか見ていませんでしたが、今後は大型小売店という緩やかなくくりの中で高級な所を占めていく、という形に変化を続けるのではないでしょうか」

 東京・銀座で新たな船出をするJフロント。山本良一社長は計画発表の記者会見の中で、こう付け加えるのも忘れなかった。

「ただ、百貨店が培ってきたDNAがございます。松坂屋銀座店の、先進的な新しいものに挑戦するマインドは、われわれの心の中に残っています」

週刊朝日 2016年11月11日号より抜粋