「わかりました。日本一になりましょう」
平尾氏は97年、34歳で日本代表監督に就任。98年の現役引退後もリーダーシップを発揮し、神戸製鋼のゼネラルマネジャー(GM)兼総監督、ラグビーW杯日本大会の組織委員会理事にも就任するなど精力的に活動していた。平尾氏をよく知るノンフィクションライターの松瀬学氏は言う。
「先見性があって、古い体制をドラスティックに切り開いていく。日本代表監督就任時には、外国籍選手を数多く登用し、主将にはマコーミックを指名しました。当時では考えられなかったことです。すべてはラグビーの実力、人気、価値を高めるための行動だったのでしょう」
大八木氏も言う。
「ラグビー界のために二つも三つも先を考えていた。3年後に日本でのW杯もある。今こそ平尾の提案が必要なときやったのに……。もう会えへんとか、いいひんという実感はないんです」
きっとラグビー界の行く末を、あの優しい目で見てくれているだろう。(本誌・亀井洋志、大塚淳史、吉﨑洋夫、秦 正理/今西憲之)
※週刊朝日 2016年11月4日号