例えば会社員の場合。掛け金は毎月2.3万円、年間で計27.6万円まで積み立てができるのだが、減税額は課税所得によって異なってくる。

 新入社員など最も所得税率が低い「課税所得195万円以下」であれば、掛け金の約15%分の税金が安くなる。金額にすると4万1600円分トクをする計算だ(住民税・復興特別所得税含む)。安くなる割合は課税所得、つまり収入が高い人ほど30%(8万3900円分)、33%(9万2400円分)と高くなる。もっとも、所得分布からみれば、20%と30%の割合で余得にあずかる人が多そうだ。

 仮に運用先に定期預金を選べば、預金金利はご承知のとおり、スズメの涙ほどしかない。だが金利による運用益が期待できずとも、この掛け金の非課税額だけで十分な恩恵が期待できるのも大きな特徴だ。

 さらに、60歳になってから受け取る際にも優遇措置が用意されている。受け取り方は主に二通り。一時金としてまとめてもらうのであれば「退職所得控除」を、一般的な年金のようなスタイルで受け取るならば「公的年金等控除」を受けることができる。

「運用益に税金がかからないという点では、NISA(少額投資非課税制度)も同じです。ただNISAの場合は基本的に5年間という運用のゴールがあり、短い。そのため運用損が発生してもやむを得ず終えなければなりません。さらに、個人型DCは60歳までと運用期間が長いうえに、60歳のときに運用損が出ていた場合は、最長70歳まで受取時期の変更が可能です」(同)

 一方で、いくつか注意も必要だ。今回拡大する加入対象者の中でも気をつけたいのは専業主婦だ。

 個人型DCの口座開設をすると、毎月「口座管理手数料」が発生する。このコストは、安い場合で年間2千円、高い場合で7千円ほどだといい、これがくせ者なのだ。

 先述のとおり、個人型DCの長所には「掛け金の非課税」があるのだが、これはあくまで納税者が受けられるメリット。そのため、納税のない専業主婦は受けることができない。つまり専業主婦が加入する場合は、口座管理手数料でかかるコスト以上の運用益をあげられる商品を選ばないと、手数料を引かれてしまえばマイナスになってしまう可能性もあるのだ。

 また、積立金は60歳まで引き出すことも借りることもできない。口座管理手数料が一見安くても、運用する投信の手数料の両方を確認し、かかるコストは全体で把握し、比べたほうが賢明だ。

 まもなく拡大する個人型DC。政活費に手を付けた富山市議、県議の皆さんも、老後は自身のお金で備えましょう。

週刊朝日 2016年10月14日号より抜粋